5年目看護師の私が患者さんを看取るときに意識していること

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先日、久しぶりに患者さんを看取る機会がありました。
療養病棟ではありますが、看取りも行っていますので、こういう機会はたまに訪れます。
師長からもらった言葉や、これまでの4年間、看護師として働いてきた中で感じた事を紹介します。

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「患者さんは亡くなるとき、“人を選ぶ”」「最期に身を張って“教えてくれている”」

私がまだ新人看護師と呼ばれていた1年目の頃、立て続けに看取りに出会うことがありました。
特にある日の準夜勤務の間に、1時間ほどの時間をおいて2人の方が亡くなったときには、肉体的にもそうですが、精神的にしんどかったのを覚えています。
どうして自分の時に…呪われているのではないか…などと考えた事もあります。

そんなとき、また別な患者さんを看取る機会がありました。
そのケースでは、私の観察力不足で、死戦期呼吸(下顎呼吸)になっていることに気が付かず、後から入ってきた先輩に「これヤバいじゃん!下顎になってるよ!」と怒られたのです。
下顎呼吸になる前から既に意識レベル低下があったため、亡くなるのは時間の問題ではありましたが、観察力不足を露呈してしまい、正直落ち込みました
そして、その患者さんは息を引き取り、処置などが終わって落ち着いてから…翌日だったかもしれませんが、当時の病棟師長と話す機会がありました。

そこで「患者さんは亡くなるとき、“人を選ぶ”」「最期に身を張って“教えてくれている”」という言葉をいただいたのです。

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「患者さんは亡くなるとき、“人を選ぶ”」とは?

師長は「患者さんは“亡くなるときにいて欲しい人”がいるときに亡くなる。だから、看取りを行う事は不幸ではなく幸せなこと。」と話しました。
患者さんに選ばれた人だからこそ、看取りの場面に立ち会える。
そのように考えた事がなかった私は、目からうろこが落ちた気分でした。

その後も何度か看取りに当たった私は、今はこのように考えています。
現在の日本では、7~8割の人が病院で亡くなると言われています。
これはすなわち、慣れない場所(=病院)で、それまでの人生で関わりがなかったような人達(=病院スタッフ)に看取られる事がほとんであることを意味します。
仮に認知症が進行していたり、既に意識が無くなったりしているような状態であっても、病院という自宅ではない場所という感覚は、スピリチュアル的な部分で存在しているのではないでしょうか。
その中で、少しでも安らかに亡くなろうと思うと、本能的に自分が落ち着きそうな人・安心できそうな人がいるときを察知して、亡くなっていくのではないか、と思います。

「最期に身を張って“教えてくれている”」とは?

師長は「患者さんは、亡くなるときに自分の身を張って最期に何かを残そうとしている。だから、あの患者さんは“下顎呼吸はこういうものだ”と教えてくれたんじゃないかな。」と話しました。
当時はまだ経験が浅く、うまくその状態を観察することができませんでした。呼吸しているようだし、大丈夫だろう…と思ってしまったのです。後からどうしてちゃんと観察できなかったのか、自分の知識や経験不足を後悔していました
師長は、もしかしたらこういった自分の気持ちを察知して、このように話してくださったのかもしれません。
それでも、「最期に教えてくれている」という言葉は、現在でも私が患者さんの看取りに出会うたびに思い出される言葉となっています。

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その人の人生の最終場面に携わる“看護”

人はいずれ亡くなります。
患者さんがどのような人生を生きてきたか、看護師がその全てを知る事はできません。
しかし、その最終場面で、患者さんが安らかに亡くなる手助けができるのが看護師です。
人生の締めくくりの場面に敬意をもって看護を行う事が必要なのではないかと思っています。
また、もし死後の世界という物があるならば、「最期にあの看護師さんはよくしてくれた」と思っていただける看護をしたいとも考えています。

家族の方が立ち会えるような“看護”

患者さん本人だけでなく、その家族の方にも“看護”を行えるのが理想です。一般的には“配慮”とも言われる行為ですね。
臨終が近いと判断される状態のとき、家族の方が最期を看取れるような配慮や、実際に亡くなったあとにも別れの時間を設けたりします。
中には、家族がほぼいないような人や、いても「死んだ後に連絡してくれ!」と冷たい方もいますが……
私の勤務している病棟では、もともと状態が悪い方もいるため、家族の方もある程度覚悟されている場合が多いです。
とは言え、やはり最期に立ち会うと悲しみを表出される方が多いですね…そういった家族の方に対して、どう声かけをしたら良いのか、そもそも声かけをしない方がいいのか、毎回、状況が違うので悩むところです……

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仕事として考えたら大変、でも……

確かに仕事として考えたら看取りは大変です。
医師や家族への連絡はもちろんですが、死後の処置(エンゼルケア)、他の患者への配慮、また亡くなるまでの間もモニターが付いていればその管理や、点滴や酸素吸入などの処置や管理、体位変換など、普段とは違う業務が増えるのも事実です。
しかし、一方で患者さんの最期の場面に携わるという、看護師をしていなければ立ち会うことがないであろう場面で、自分の専門知識を生かして関わる事ができます。
そして、その場面から毎回、学びを得て、看護師として成長していく糧にすることもできます。
看取りも行う病棟で勤務している以上、患者さんが亡くなる場面は避けることができません。
それでも、ここまで述べてきたようなことを意識して、これからも携わっていこうと思います。