「恐るべきさぬきうどん」という本をご存じでしょうか。
以前、タウン情報かがわで連載されていた「ゲリラうどん通ごっこ」というコラムをまとめた本なのですが、この本の中でこのような名言が掲載されています。
「香川県はさぬきうどんのテーマパークである」
ゲリラうどん通ごっこ軍団(通称:麺通団)のパロットのマスター (1)現在は東京麺通団勤務 が発したとされるこの言葉ですが、これを久々に思い出してふと思いました。
お向かいの香川県がさぬきうどんのテーマパークならば、我らが岡山県は何のテーマパークなのか?
そしてそれは岡山県を訪れる県外客を増やす材料になりうるのか?
個人ブログでできる範囲で考えてみました。
香川県がさぬきうどんのテーマパークである根拠
まず、香川県がさぬきうどんのテーマパークたる所以を紐解いてみましょう。
香川県は日本一狭い都道府県です。小さいイメージのある東京都や大阪府、さらには日本一広い市町村である岐阜県高山市よりも狭いのです。
そしてそんな狭い香川県には、恐らく対人口比ではダントツの全国一を誇るであろう、600軒以上のうどん屋(あるいはうどんを食べれる店、例えば製麺所など)があります。
また、一人当たりのうどんの消費量でもおそらく日本一でしょう。
そんな香川県のうどん事情ですが、庶民的な食べ物であるうどんですので、瀬戸大橋の開通ブームや1970年大阪万博などで一時的にブームになったことはあるようですが、現在のように食べ歩いたりするようなものではありませんでした。
それが変わったのが、1988年からタウン情報かがわで連載が始まった「ゲリラうどん通ごっこ」です。
この「ゲリラうどん通ごっこ」は地元民(それもそうとう狭い範囲の地元民)しか知らないようなディープなうどん屋を紹介する記事です。しかし。うどん屋にたどり着くまでの道中記の方が長かったり、なんならうどん自体の情報はろくに書かれていない、地図も適当…といった、グルメ情報ではなく「読み物」として楽しめるものでした。
この連載を機に、当時の香川の若年層を中心にうどん屋巡りがレジャーとして広まりだし、地元山陽放送の「VOICE21」でもディープなうどん屋が取り上げられるなどして、レジャーとしてのさぬきうどんブームが発生し、現在まで続いています。
ちなみに、このゲリラうどん通ごっこをまとめた物が「恐るべきさぬきうどん」であり、ゲリラうどん通ごっこの連載終了後にゲリラうどん通ごっこ軍団(通称:麺通団)の団長、田尾和俊氏が後継作として執筆したのが「超麺通団」です。
私自身、VOICE21などで「香川県のうどん屋ではネギを裏の畑から取ってくる」「自分で麺を取りに行って自分で温めて自分でうどんだしをかけて自分でお金を払っておつりを取って、食べたら食器を自分で返す」と言った、「マジかよそれ」みたいなうどん屋を見聞きした記憶があります。
また、家族で琴平町の金比羅神社へ行った際には、うどん屋を2軒ほど巡ったような記憶もあります。
いずれにしても、うどん屋巡りをレジャーとして楽しめるものなのだと認識していた記憶があります。
香川のうどん屋の種類
香川のうどん屋はいくつかの種類に分けることができます。
一般店型
注文を店員さんが取りに来て、店員さんがうどんを持ってきて、店員さんが食器を片付けてくれるお店です。
基本的にはこの一般店タイプが一番多いようです。
製麺所型/製麺所風
製麺所型は、元々製麺所でついでに食べさせてくれる店です。
ただし、うどんブームによって、製麺所風の店ではあるけれども、製麺所としての営業は行っていない店があります。
この製麺所型の“発見”が現在のさぬきうどんブームを生んだとも言えます。
大衆セルフ
はなまるうどんがこのタイプですが、うどんや天ぷらなどを自分で取りに行くスタイルです。
ただ、店によってシステムが異なります。
お金をいつ払うか(食べる前か後か)、うどんだけが出てくるのか、ダシもかかっているか…
岡山県に香川のさぬきうどんのような存在はあるのか?
さて、やっと本題です(
岡山県を何かのテーマパークと仮定したときに、香川のさぬきうどんのようになれる存在はあるのでしょうか?
桃太郎
岡山県と言えば何はともあれ桃太郎…みたいな風潮があります。
なぜ岡山が桃太郎かというと、次のような要因があるようです。
- きびだんご絡み
- 元々岡山県は広島県東部も含めて「吉備国」であった
- 桃太郎に出てくる「きび団子」と、江戸時代に作られた土産物の「吉備団子」をかけた
- 吉備津彦と温羅の伝説と桃太郎のストーリーを絡めた
- 温羅という鬼を吉備津彦が倒したという話
- 関連する史跡として、鬼ノ城や鬼の釜、吉備津神社/吉備津彦神社などがある
しかし、桃太郎伝説は岡山県全域で語られる物ではありません。
と言うよりも、実質的には吉備津周辺の話であり、現在の自治体で言えば岡山市北区と総社市がその中心となります。
歴史好きにはたまらないのでしょうけれども、ただ単に「桃太郎伝説の場所です」みたいなのでは難しいですよね…
また、確かに県全域で桃太郎にかけた物(空港やお土産物など)は多くありますが、ではそれで観光客を呼べるかというと疑問符も付きます。
B級グルメ
岡山県にはB級グルメが数多くあります。
2011年のB-1グランプリで優勝したひるぜん焼きそばを始め、津山ホルモンうどん、日生のカキオコなどです。
うまく使えばテーマパークにできそうですが、問題もあります。
B級グルメ自体は全国で似たような物がたくさん生まれてきています。
その中で他県とどう差別化するのかがポイントでしょう。
日生のカキオコは地元の特産物を使用している点でポイントは高いですが、カキのシーズンが限られてしまうため、通年というわけに行かないのが難点です…(冷凍ものを使っている店もありますけどね)
また香川県よりも岡山県は広いため、移動時間がかかってしまいます。
そのため、「日生でカキオコ食べて、津山でホルモンうどん食べて、ひるぜん焼きそばでしめる」みたいなことはしんどいです。
それぞれのエリアでいかにレジャー要素を生み出すかが鍵になりそうです。
フルーツ
岡山県はくだもの王国と言われます。
清水白桃を始めとする白桃、マスカット・オブ・アレキサンドリアやシャインマスカットなどのぶどう、めちゃくちゃ大きな梨である愛宕梨などがその代表です。
…高級なくだものが多いんですよね(苦笑
季節物ですので、観光客誘致という意味では通年で使えない欠点はありますし、そもそもフルーツでどうやって観光客を呼ぶかという問題はあります。
とりあえず、倉敷美観地区にある「くらしき桃子」というお店では、桃をまるごと使ったパフェを提供していますけどね。これは個人的には好きです。
スポーツ
岡山県にはサッカーJ2リーグ所属のファジアーノ岡山を始め、バレーボールの岡山シーガルズや、卓球の岡山リベッツなど、全国リーグで戦っているスポーツクラブがあります。
スポーツパークという意味では確かに今後期待できる要素ではあるかと思いますが、次のような問題があるため、かなり厳しい部分があるとも思います。
- 施設が決定的に少ない
- J1規格を満たすサッカー専用スタジアムが無い
- これについては、関係団体が専用スタジアム実現に向けて動いている…らしい。
- 陸上競技場であるシティライトスタジアムをサッカー、陸上、その他競技で取り合っている現状がある
- J1規格を満たすサッカー専用スタジアムが無い
- スポンサーや親会社になり得る大企業があまり立地していない
- スポーツ不毛の地と呼ばれたほど、かつてはプロスポーツの興行が成立しない土地柄だった
- ファジアーノ岡山にしても、年間平均観客動員数は多くて1万人。ここ2年は1万人に届いていない。
- プロ野球が立地していない
- プロ野球独立リーグ「四国アイランドリーグplus」へ岡山球団を参加させる話もあったと思うけどどこへ消えた…
やっぱりB級グルメですかねぇ…
人を一度だけ呼ぶのであれば、別になんでも良いと思うんですよ。
しかし今後、岡山県があの水害から立ち上がってさらなる発展を遂げようと思ったときに、もし観光を使うのであれば、「持続性のある」「怪しい」「面白い」「楽しい」という要素も必要だと思います。
そうなると、B級グルメはレジャー要素も観光要素も備える物になると思います。
ただし、しかるべき団体が「岡山県はB級グルメのテーマパークである」という基本方針を立てて、その実現のためにどうするか、またそれを実現した結果、どのような状態になっているべきかを固めておかないと方向はブレます。
…まぁ個人ブログで提言するようなことは、恐らく県の観光課などではとっくに考えているとは思いますけれども、あらためて考えてみたら、こんな感じになりました。
機会があったらもう少し掘り下げてみたいです。
References