看護学生が避けては通れない看護学実習を思い出しながら紹介してみる

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看護師になる上で欠かせないのが「看護学実習」です。
看護学実習とはどのような実習なのか、私の経験を元にしつつ紹介していきたいと思います。
学校によっては実習の名称が若干異なる可能性はありますので、あくまで一例として…

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実習ってどれくらいの期間なのか?

学校によって若干違うかも知れませんが、基本的には2~3週間程度です。
平日のみ12日間という場合が多い気がします。(月~金を2週間続けて、3週間目が月曜・火曜のみ)
ただし実習先によっては1週間だったりもします。これはカリキュラムや実習先の病院・施設の都合などですね。
一応、看護教育の要領みたいなので実習時間が決められているのですが、それにどうしても足りない場合は学内演習等で補充されたりするかもしれません…(夏休みに学校行って実習の足りない時間分の演習したような記憶が…)

グループとかに分かれるの?

実習は通常、5人程度の実習グループに分かれて行います。実習先によってはこれより少ない場合も多い場合もあります。
グループ毎に決められた病院・病棟に行き、実習を行います。
専門学校(3年課程)の場合、2年次の後半ぐらいから3年次の10月あたりまでずっと実習です。
私の通っていた学校では固定された実習グループで約1年間過ごすことになりました…
もちろん、途中で学校での講義等もありますが、ここでの人間関係は重要になってきます。
学校によるとは思いますが、私の場合は先生がグループを決めましたね。
何らかの意図があってメンバーを編成したみたいです。今となって思えば…ですが…
なお、学校によっては毎回メンバーを変えるところもあるようです。

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どんな実習をするのか?

看護学実習と言っても、実はいくつかの種類に分かれています。
そのため、まずはどのような実習があるのか紹介していきます。

基礎看護学実習

名前の通り、基礎的な実習となります。
具体的には…

  • 病院自体の見学
  • 患者さんとコミュニケーションを取る
  • さほど難しくないケースの患者さんを受け持ち、情報収集をする。
  • 情報を元にアセスメントを行い看護計画を立ててみる

と言ったあたりでしょうか。
基礎看護学実習では基本的に看護計画の実行までは問われなかった記憶があります。
ただし患者さんによっては実際に計画を実行させていただけることもあるので、ケースバイケースかもしれません。
受け持つ患者さんは成人の方です。成人と言っても幅が広いのですが、実際、老人と言える方を受け持つ場合もありますね…

成人看護学実習

成人を対象にした実習です。
基礎看護学実習に加えて、看護計画の実行と評価を行います。
受け持つ患者さんは成人の方です。ただし、やっぱり老人と言える方を受け持つ場合があります。むしろそれしかないかもしれません。
成人看護学実習は大抵「急性期」「慢性期」「終末期」と3回実習することになると思います。

急性期実習

急性期の実習では、何らかの手術(見学)とその後の看護を行います。
私の場合は動脈瘤の手術で、確か人工血管に置き換える手術を見学し、その後その方が退院するまでの看護計画を立てて実行した記憶があります。
非常に展開が早いので、ついて行くのが大変ですが、将来オペ室やICU勤務を考えている人に取ってはやりがいのある実習かもしれませんね。

慢性期実習

慢性期の実習では、慢性的な疾患の悪化で入院した患者さんを受け持ち症状の改善や退院後の生活支援などを計画し実行していきます。
よくあるケースは糖尿病や高血圧、脳血管障害による麻痺などですかね。

終末期実習

文字通り、終末期の患者さんを受け持ちます。
言わばターミナルケアに近いかもしれません。実際に実習で看取りを行うことはほぼないとは思いますが、今後全快が見込めない方に対する看護を学びます。
老人のイメージが強いですが、例えば若くしてガンになってしまい、余命数年だったりするケースもあります。

老年看護学実習

老人の患者さん対象にした実習で、病院実習施設実習の2種類があります。

病院実習では老人の患者さんを受け持ち、情報収集を行い、看護計画を立案・実行していきます。
この実習では特に認知症がある患者さんを受け持つことが多いと思います。そしてそういう方は大抵耳が遠かったり視力が落ちていたりします…
そのため、コミュニケーションスキルが問われます。

設実習は、特別養護老人ホームや老人保健施設などで施設における看護師の役割を学びます。
またコミュニケーションや実際のケア(おしめ交換など)もさせていただけたりします。
施設の看護師は病院と違って、より多岐にわたる知識が問われるので、そういった部分でも勉強になりました。

小児看護学実習

小児の患者さん(患児)を対象にした実習です。ただし私の場合は病院実習保育園実習がありました。

病院実習では、患児を受け持ち、情報収集を行い、看護計画を立案していきます。
実行まではなかなか行う時間が無かった記憶があります。
小児実習はかなり季節に左右されるらしく、私が実習したときは冬だったのでインフルエンザでの入院が大半でした…
しかも3日ぐらいで退院していくため、受け持ったと思ったらすぐに退院してしまうみたいな状況で、困難感を覚えた記憶があります…
ただし、中には難病や先天的な疾患で長期入院になっている患児もいるため、そういった子を受け持つ場合もあるかもしれません。その場合はまた違ったことを学べるのでは無いかと思います。

保育園実習は、元気な子ども達と楽しく遊ぶ実習です(笑
一応、「健康な子どもとの関わり方を学ぶ」のがこの実習なのですが、私が入らせて貰ったのが5歳児クラスで、実習に行ったのが確か冬。春から小学校1年生の子供達ですから、そらもう元気すぎました…
普通に会話出来るし、実習期間中は毎日ひたすら遊んだ記憶しか無いです…
発達段階による違いを学ぶと言うことで、3歳児クラスにもいきましたが、やっぱり遊んでたような…
0歳児クラスに行った同級生は「ひだすら正座して抱っこするしかすることなくて辛かった…」と話してた記憶はあります。
保育園によっては看護師が勤務しているところもあるらしいので、そういった保育園で実習だとまた違うのかもしれません。

母性看護学実習

わかりやすく言えば、出産に関わる実習です。産婦人科での実習ですね。男子看護学生には制約がついて回る実習です。
産婦さんの了解が得られれば、出産を見学させてもらえたり、新生児のケアを見学・体験させてもらえたりするらしいです。
また妊婦健診や婦人科の診察を見学する時間もあります。
とは言え、男子看護学生は患者さんの視界の入らない所に隠されて声だけ聞くようになったりしますので、なかなか男子学生にとってはつらい時間が続くかもしれません…

在宅看護論実習

在宅看護の実習です。分かりやすいのは訪問看護ですかね。
私の通った学校では、訪問看護ステーションでの実習とデイサービス・デイケアでの実習がありました。
訪問看護ステーションでは、実際に訪問看護師とともに利用者さんの家を訪問し、情報収集、そしてアセスメントし看護計画を立案します。
何軒か訪問を見学させてもらえますが、そのうちの一軒に対して計画を立案した記憶があります。
デイサービス・デイケアでの実習は、老人看護学実習における施設実習みたいな感じで、デイサービス・デイケア施設での看護師の役割を学びます。
…が、こういった施設ではなぜかレクリエーションをやるように言われることが多いです……

精神看護学実習

精神科での実習です。
ここはちょっと他と雰囲気が異なってきます。と言っても、患者さんを受け持って情報収集、アセスメントし計画を立案・実行・評価という流れは同じです。
何が違うかというと…
実はここまで書いた実習(+次の統合実習)では、受け持つ患者さんは病院の実習担当者さんか先生から決められるケースが大半です。
ですが、精神科の実習ではほとんどの場合、受け持つ患者さんを自分が決めることができます。(病棟による)
精神科に入院している患者さんは、認知症病棟で無ければベッドに寝たきりという事はあまりなくて、廊下やホール、自室などで好き勝手していることが多いです。
そこで、実習初日~2日目ぐらいに病棟内のいろんな患者さんと関わり、その中から気になる患者さんを見つけて、実習担当者さんに報告、ドクターのNGが無ければその方を受け持つ…という流れです。私は選んだ患者さんを実習指導者に報告したら最初はOKだったのですが、翌日ドクターからNGが出て受け持つ患者さんが変更になったと言う経験があります…

また精神科では長期入院のケースが非常に多いです。
なにしろ昭和年代から入院している人なんてザラにいますからね…
そのため、長期入院に伴う様々な弊害についても知る事ができます。

疾患としては統合失調症やうつ病などが多いかと思います。
私が実習した病棟では「私は天照大神と交信できる」とか「神の声が聞こえる」とか「私は様々な宗教を総合して、自ら新しい宗教を立ち上げようと思っている」などと話す方がいました。
…まぁこのように妄想や幻覚などへの対応を学ぶことができます。

統合実習(綜合実習)

名前の通り、これまでの実習を統合していく実習です。
ただ、この実習では看護計画の内容はそこまで問われません。
この実習は大抵、2人の患者さんを同時に受け持って、それぞれに対してケアを行うことが問われます。
時間の使い方だったり、情報の把握の仕方だったりが問われます。
また見学にはなりますが、看護管理も学びます。
看護管理とは、管理職…要は病棟ならその師長ですが、どういった形で管理していくのかを学びます。
配置基準や一人当たりの夜勤回数なども関わってきますので、そのあたりの実際を学びます。

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実際の実習の雰囲気とは…

看護学実習は、よくTwitter等でもネタにされていますが、軍隊みたいな要素があります。
朝の申し送りの際に、グループ全員が起立し、グループリーダーが
「○○専門学校○年、メンバー○名全員出席しています。今日は○○と○○が午前中入浴介助の見学、××と××が午後から他病棟見学を行います。今日も一日よろしくお願いします。」
などと挨拶を行い、夕方の終了時も同じように挨拶を行います。

また実習時間中は受け持ち患者さんを担当している看護師の動向を常に気にし、何か動きがあればすぐにダッシュ、そして分からないことを聞くと「そんなんも調べてきてないのか」と言われ答えは教えてもらえず、ナースステーションに居場所はなく、実習終了時間前のカンファレンスでは実習指導者の看護師に質問攻めにされ…みたいな、なんかもうネガティブな思い出しかないですね……

実際に看護師になってみると、指導者の看護師の意図も分かってきました。
やっぱり命に関わる仕事なので、甘くできないんですよね…なのでどうしてもきちんとした考えや技術、知識を身につけたか確認をする意味で質問攻めにするんでしょうけど、なにせ学生の時はそこまで考えが及ばなかったので…

実習ですること、できること、できないこと

看護学実習では、基本的には看護を学ぶわけですが、できることとできないことなどがあります。
看護師になるつもりの学生とは言え、実習段階では無資格なので、そこに伴う制限ですね…

実習ですること

大抵の実習で行われることです。
基本的には患者さんを受け持って、その患者さんに対する看護を計画を立てていきます。
いわゆるPDCAサイクル(Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善))になります。
行うこととしては、次のような感じです。

  • 情報を収集する
  • 情報を元にアセスメントを行い、受け持ち患者の看護問題を見つける
  • 看護問題を解決する看護計画を作成する
  • 看護計画を実施し、その結果を評価する

ちなみに、就職してからも基本的にはこれの繰り返しです…
学生の時よりも受け持ち人数が増え、さらに時間も限られてきますので、学生の間でしっかり身につけてないと就職してからしんどいです。

情報を収集する

患者さんとコミュニケーションを取ったり、カルテなどから、受け持った患者さんの情報を集めます。
この情報は病気に関することだけで無く、家庭環境や仕事など、プライベートなことも必要になってきます。
これは、患者さんが元の生活(=入院前の生活)に戻るには何が問題かというところが関わってくるからです。
完治して退院する方だけで無く、何らかの支障・障害が残って退院することもあるので、その場合にどのような支援が必要を判断する必要があります。
ただし、学生の場合、受け持ち期間が限られてくるため、実際に退院支援を行わないことの方が多いです。
…と書いておいてなんですが、私は受け持ち患者さんが退院するという場面に(小児看護学実習を除いて)2回遭遇しています。

アセスメントを行い、看護問題を見つける

集めた情報から、患者さんの看護問題を見つけます
アセスメントを行っていくのですが、これは様々な手法があります。
「看護概念モデル」というものがあって、ヘンダーソンやロイ、ゴードンと言った理論家がモデルを作成しており、それらを利用しながら看護問題を見つけていくことが多いです。
また関連図というものを使うこともあります。
これは患者さんに関わる要素(疾患だけで無く様々な情報)を紙の上に並べて関連付けていき、看護問題をあぶり出していく方法です。先ほどの看護概念モデルと組み合わせて使うことが多いかと思います

看護計画の作成

見つけた看護問題に対して、看護計画を作成します。
参考書や教科書を参考にしつつ、患者さんに対しての計画を立案します。
教科書丸写しではなく、個別性を重視した計画を頑張って立てます。
そして実習担当者や先生にダメ出しを食らいます(笑

計画を実施し評価する

病院の実習担当者さんや学校の先生の見守りの元、実施します。
実施と言っても、学生の間は医療行為はできませんので、よくあるのは足浴とか手浴といった医療行為ではないケアになります。
病棟内の散歩なんかも計画したりしますね。
さらに実施したものを評価し、効果があったかどうかを検証します。

実習でできないこと

できないことは単純明快です。医療行為はできません。例えば注射や点滴の交換といった行為は医療行為になりますので、無免許の学生の間はできません。
また傷の処置や創部の消毒などもできないかと思います。
それぞれ見学はさせてもらえますので、勉強にはなります。
またグループの受け持ち患者さんのカルテ以外を見る事を禁止されることがあります。
これは個人情報保護の観点からなされることが多いです。
電子カルテだと閲覧権限を制限されたりするかもしれません。
しかし、受け持ち患者が決まっていない実習や、自分で決めることができる精神科の実習では、病棟看護師に言えば見せてくれることもあります。

実習で出来る事

例えば寝たきりの受け持ち患者さんのおしめ交換や更衣、清拭などは病棟スタッフとともに行うことができます。
さらに受け持ち患者さんに関わる医療行為以外の事は大抵させてもらえると思います。
病院によっては、そして実習によっては受け持ち患者さん以外のケアも見学できたりさせてもらえたりもします。
男子看護学生にまつわる制約もあることはありますが、よっぽどの事で無ければさせてもらえることが多いです。

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ところで、病棟の看護師は看護学生のことをどう思ってるの?

学生にとっては、病棟は完全アウェーで、看護師はとにかく怖かったり、学生にだけ理不尽に厳しかったりするのですが、実際に看護師になってみると、そういった態度を取るのも理解できるようになりました。

病院は患者さんの命を預かる場所です。
それは急性期の病院はもちろんですが、私が勤務しているような慢性期の療養病棟であっても同じです。
一方で、学生は言わば素人です。適切な表現ではないですが、学生の行為で患者さんの命が無くなる可能性もゼロではありません。
そのため、どうしても厳しい口調になってしまうのだと思います。

ですが、私はちょっと違う考えを持っています。
実習に来ている学生は未来の看護師です。もしかしたら将来一緒に働く存在かもしれません。
学生はお客様ではありません。しかし未来の看護師を必要以上に怖がらせる事は、看護に対する熱意を失わせ、結果的に看護師の仲間を減らしてしまわないかと思うのです。
私自身、実習に出る度に看護師になるのを辞めようかと考えた時期があったぐらいです。

また学生から自分達が学ぶこともあります。
日々仕事に追われていると、どうしても様々な面から見れなくなってしまうことがあります。
そういったときに、患者さんの新しい側面が見られるのは、学生さんと患者さんの関わりだったりします。
もちろん、命を守る仕事である以上、厳しさは避けられない部分ですが、同時に看護の楽しさや面白さも伝えられる、そんな看護師でありたいなぁ…と思います。